子どもたちが、八重瀬町の豊かな自然や生き物について学ぶ体験。
SOLVEプロジェクトで昨年度から計画していたサマースクールを、この夏、無事に開催することができました(共催:総合地球科学研究所LINKAGEプロジェクト、運営:NPO法人おきなわ環境クラブ)。4日間の日程で、小学校低学年から中学生までの27名が参加しました。向陽高校生、琉球大学の学生も、子どもたちの学びをサポートしてくださいました。身近な自然に触れて観察する体験をきっかけに、八重瀬町の子どもたちが環境保全について考えるようになってくれることを願っています。
1日目:「クチャを取りに行こう!」「クチャのミクロの世界」
8月6日(土)講師:新城竜一先生(総合地球環境学研究所・琉球大学 教授)
八重瀬町役場近くで、沖縄本島南部特有のクチャと呼ばれる土を採取し、向陽高校の教室に移動して、顕微鏡で観察しました。クチャを入れたお椀に少しずつ水を加え指の腹でやさしくこすって細かい粒子を選別する「わんがけ法」という方法で取り出したものを顕微鏡で観察すると、有孔虫の化石が見えました。それぞれの有孔虫化石を調べることによって地層年代や生息していた当時の環境を知ることができるそうです。
2日目:「洞くつ探検に行こう!」「溶ける石 “石灰石”」
8月7日(日)講師:新城竜一先生(総合地球環境学研究所・琉球大学 教授)
午前中は洞くつ探検です。全長250メートルのターガーガマは、つらら石や石筍といった鍾乳石が観察できる鍾乳洞です。天井が石灰岩、床はクチャとなっており、洞窟でしか見られない生き物も生息しています。戦時中は自然の壕として避難した人々を守りました。午後は、向陽高校で石灰岩の性質を調べる実験です。石灰石はどんな液体に溶けるのか、数種類の溶液に石灰石を入れて、酸性・アルカリ性の度合いを調べました。そしてこの実験で分かった、石灰石が酸性の溶液に溶けやすい性質を海洋環境におきかえてさらに考えました。大気中のCO2が増加すると、CO2は海洋に吸収されて海水が酸性に傾きます。酸性に傾いた海水は、炭酸カルシウムからできているサンゴ礁や貝の成長を阻害し、サンゴ礁を住みかにする生物たちも生きづらくなります。人間活動によるCO2の排出量増加、海洋酸性化が地球環境にどのような影響をもたらすのか、あらためて考える機会となりました。
3日目:「星砂を探せ!」「有孔虫の観察」
8月27日(土)講師:藤田和彦先生(琉球大学理学部 教授)
3日目は、玻名城海岸での有孔虫探しからスタートです。子どもたちは首から下げた虫眼鏡で足元を拡大しながら、海岸の石や砂、藻類から、直径1mmにも満たない有孔虫を採取していました。さてそれを顕微鏡で観察すると、「有孔虫」という名前たるゆえんのおびただしい数の穴が見えました。この穴に藻類が共生して光合成をおこない、単細胞生物である有孔虫が生きるための酸素を取り込むしくみです。硬い殻の小さな穴から糸のような「仮足」を出して、壁にへばりつこうとする様子も見えました。2日目に学んだ「海洋酸性化」で生きにくくなるのは有孔虫も同じです。有孔虫は、殻が堆積して石灰岩を形成し、サンゴ礁生態系の維持にも貢献する生き物ですが、「海洋酸性化」によってその成長が阻害されてしまうからです。
4日目:「海岸の生き物観察」「コドラート法で生物調査」
8月28日(日)講師:中村崇先生(琉球大学理学部 教授)
4日目も、玻名城海岸が活動場所でした。サンゴに囲まれた浅い穏やかな海「イノー」にどのような生き物がいるのかを観察・調査しました。コドラートとは、正方形柄の枠のことで、枠内の生物の個体密度や種の多様性、水温や水質、地質、などを記録するのがコドラート調査法です。子どもたちはグループに分かれて、大学生に教えてもらいながら生き物の色や形・大きさ、サンゴの占める面積の割合などを記入していきました。最後のふりかえりでは、より陸に近い場所では干潮と満潮で環境の差が生じること、イノーより沖の方で干潮時にも常に水中にある「潮下帯」との違い、地形や日光の当たり方の違いによっても生物の生息状況が変わることを体感して学んだ様子でした。