主催 水の環プロジェクトチーム

日時 9月7日(土) 13:00-16:00

場所 沖縄キリスト教学院大学教室(南1-2,1-3)

今回のみずのわ教室では,金沢工業大学・学生プロジェクト「SDGs Global Youth Innovators」(以下,GYIs)の青木 啓人(あおき ひろと)さん(金沢工業大学 経営情報学科 4年)辻 弥(つじ わたる)さん(〃2年)を招へいし,彼らが開発したカードゲーム『THE SDGs Action cardgame「X(クロス)」』(以下、X)に取り組み,サイエンス・コミュニケーションツールの作り込み方やファシリテーターの育成方法などについて学んだ。「X」は,SDGs[i]の理解と取組の促進のために開発されたカードゲームで,ビギナーコースとアドバンストコースがある。まず,アイスブレークを兼ねて,ビギナーコースでゲームのルールを学び(写真1),次にアドバンストコースでオリジナルカードを作製して,さらにSDGsについての理解を深める構成となっている(写真2)。

 

写真1:ビギナーコースの様子。まだ少しプレーヤー同士の距離を感じる。プレーヤーが持っている青い枠で囲まれた既存のカードを思いついた順に一枚ずつ出して,真ん中に置かれたトレードオフカードの課題の解決に取り組む。縦方向に3名がチームとなって,協力して課題の解決を目指しているところ。2番目以降に出すプレーヤーは,それ以前に出されたリソースと組み合わせて考えなければならないので,2番目以降の人の方がハードルは上がっている。

 

ゲームの内容としては,トレードオフカードとリソースカードがあり,トレードオフカードにはSDGsの目標の裏表(例えば,途上国支援をしたら,支援を受けた国民が働かなくなった,など)があり,リソースカードには様々なツールやアイディアが記されている。リソースというのは,例えばAIや火星探査機のような最先端技術などが挙げられるが,その他にも「美しい海」や「ゆいまーる」といった地域特有の自然環境や文化的資産も含まれる。ゲームのクリア条件としては,それらのリソースを組み合わせることでトレードオフカードが示す新たな社会課題を解決しよう,という協力型の設定がなされている。世の中に生じる新たな社会課題に対して,複数のツールやアイディアを組み合わせることでブレイクスルーを目指すという,これから先の社会人に求められている力を養うことができる。

 

写真2:アドバンストコースの様子。プレーヤーが持っている青枠で囲まれた既存のカードよりも一回り大きい白いカードが,自分たちで考え出したオリジナルのリソースカード。これらを使って,真ん中に置かれたトレードオフカードに記された難題に立ち向かう。

 

 

 

今回招へいした青木さんらが所属する金沢工業大学・経営情報学科は,2016年に新設され,これからの社会に必要となるであろう「SDGs達成に貢献する次世代リーダー」の育成も一つの目標となっている。青木さんも,まさにその一人であり,金沢工業大学が2018年1月に受賞した第1回「ジャパンSDGsアワード」SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞の受賞理由にも大きく貢献している。来年度からは,大学院への進学も決め,さらにファシリテーター[ii]としてのスキルアップとSDGsの普及に力を入れてゆこうとしている。

彼らが所属している学生プロジェクト「GYIs」も,毎年新しい賛同者が加入してきており,今回ファシリテーターの青木さんをサポートする役割で来沖した辻 弥(つじ わたる)さん(金沢工業大学 経営情報学科 2年)もその一人である。「GYIs」の持続可能な活躍と展開が伝わってくる。琉球大学からも,中尾海斗(なかお かいと)さん(琉球大学 国際地域創造学部 1年)がゲーム進行のサポートを積極的に行って,みずのわプロジェクトの持続可能な発展を支える人材育成の端緒となる働きを見せてくれた。これからも,みずのわプロジェクトに賛同する新しい水の環・人の環を拡げてゆきたい。

なお,今回のみずのわ教室で,学生に引率して来沖した北川 達也(きたがわ たつや)さん(金沢工業大学 経営情報学科 講師)は,持続可能な投資(ESG:環境,社会,ガバナンスの略)についての教育・研究を担当している。一方で,扇が丘キャンパスに設立された金沢工業大学・地方創生研究所・SDGs推進センターにも参画しており,学生プロジェクトの指導・サポートも行っているという。今回のみずのわ教室においても,あくまでも裏方に徹する形で,学生を前面に押し出し,プロジェクトの活動を温かく見守る姿は,次世代リーダーを育成する上で必要な教育者として見習うべき姿勢だと感じ,沖縄に招へいした。今回のみずのわ教室が充実した取組にできたことは,こういった水の下でも支えてくださっている人の環によるところが大きいのだと思う。この場を借りて,感謝を申し上げたい。

  • 定員50名に対し、幼・小・中・高・特支・養護・大学の教員、大学生、行政、銀行、観光、産業、NPO、メディアなどから70名が参加した。

[i] SDGs:持続可能な17の開発目標と169のターゲット(Sustainable Development Goalsの略)であり,2015年に国連が定めた行動指針の一つ。発展途上国の底上げと先進国のよりよい暮らし,さらには共通の課題として「気候変動」や「海洋・陸上資源」といった目標が設定されており,2030年までの到達目標として,世界中で取組が開始されている。日本では,内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が中心となって進められてきており,2017年には吉本興業が普及活動に参加したことでも話題を呼んだ。なお,吉本興業は第1回「ジャパンSDGsアワード」SDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞している。

[ii] ファシリテーター:ルールの説明や時間配分の管理,世界観の導入といったゲームの進行役であるだけではなく,ゲームの後には必ず振り返る時間を設け,単なるゲームで終わることがないように効果的な学びや気づきを導き出すサイエンス・コミュニケーションにおけるキーパーソン。ゲームを楽しく行うと共に,多くの学びや気づきにつなげることができるかどうかが,彼らのスキルにかかっている。